出口なし、もしくは抑圧と自我の狭間で。

「人いること知らせたい」 殺害後、爆発の動機 | Excite エキサイト : ニュース板橋管理人夫妻殺害・爆破事件 | Excite エキサイト : ニュース特集
 人を殺してはいけないということはもちろん大前提として。

 わが子に対して抑圧的な(親の側から見れば支配的な、か)親というのがいる。まあ親というものは多かれ少なかれそういうものなのかもしれないが(親になったことがないのでわからない)、自分が子に対してある意味絶対者であるがために、自分が思うところの「子はこうあるべき」から子がほんの少しでもズレてしまうことが我慢ならない。子には子の考えや価値観があるということを、認めないどころか、「自分が思うとおり」以外の「考え方」が子どもにあることが認識できない。子どもは自分とは不可分のものだから、赤の他人であれば傷つけてしまうことを恐れて言わないことであっても、言ってもかまわないと考えている。「親子だから」「子どものためを思って辛いことでも正直に」。まあそんな親が、いざ逆に子どもが自分に対して「辛いことでも正直に」言ったところで、「子どものくせに親にむかってなんだ」ってなるのは目に見えているんだけど、とまあこれは我が家の話だが。

 殺された父親は、経営していた電気店が潰れてから、住み込みの管理人のしごとを転々としていたらしい。容疑少年はそのために何度もの転校を強いられて、友達がなかなか出来ずに辛かったと中学の卒業文集に書いていたという。工作が好きで、得意な科目は技術科、工業高校に進み将来はコンピュータ関係の仕事につきたいと言っていたという少年にとって、まだ40代前半の若さなのに手に職もなく「寮の管理人」という(彼から見れば)誰にでもできるようなつまらない仕事をしている父は、尊敬の対象ではあり得ず、父親がそんなダメな大人であるために他の子と違って休みの日も寮の仕事を手伝わされていた日々は、父に対する恨みや憎しみを溜め込むだけのものだっただろうと思う。
 そんな彼にとって、近所の空家をみつけて入り込み、仲間とそこで秘密基地ごっこ(とは書いてなかったけど多分そうだろうなぁ)をすることは、数少ない息抜きというか楽しみだったのだろう。それが咎められ警察沙汰になったことで、おそらく彼の父親は、彼の人格を否定するような発言をしたのではないだろうか。
 さらにそこに、仕事が辛くて毎日のように「死にたい」と漏らしていたという母親。父さえちゃんとしていれば自分も母もこんなに辛い生活をしなくて済んだのに⋯。おそらくその思いは日々どんどん大きくなるばかりだったのではないかと。

 で、三者面談の日が迫っていた。多分その時、家族の中で彼の将来についての話題が出たのだろう。おそらくそこでは、警察沙汰になったことも蒸し返されたであろうことも考えられる。父親が言ったと思われる「お前は俺より頭が悪い」、これが彼にとってどれほど許しがたい言葉だったか、想像に難くない。ってここらへん想像に想像を積み重ねているので説得力あんまりないけど。

 なんかね。少年犯罪の時に「社会が」とか「家庭が」とか、本人の外側にばかりやたらと原因を見つけようとする考え方って私は嫌いだし、誰にとってもなんの利益にもならないことだと思う。でも、なんか今回のこの親殺しについては、少年の心情が自分自身と重なる部分もあるような気がなんとなくある。最初にも書いたとおり、もちろん人を殺すなんてことはあってはならないし、自分が殺されそうになってでもいない限り許されることではないと思う。けれども。

 親であるが故に、子どもの人格を否定し個としての価値観の存在を否定するような言葉を子どもに向けるのを「許されること」であると考えている親は(うちの親含めて)決して少なくないだろう。
 そして、多くの人、世間なり周囲なりは、子どもがそのような親の抑圧に対して不満を漏らしたとしても、「それはお父さん/お母さんもあなたの為を思って」とか「育ててもらっているんだから感謝しないと」とかそういう言葉で、不満を持つ子の方を咎めるような対応しかしない。子どもはそれによって更に自分を否定されてしまうわけだ。育ててもらってるからといって人格を否定されても受け入れなければならないわけではない、そんな当たり前のことでさえ、運良く真っ当な親子関係を築けてきた人たちには理解してもらえないのだ。

 容疑少年にとっては、親を殺すことにしか出口が見いだせなかった。その事がこの事件の最大の悲劇であり、救いのなさだと思う。

6-24追記
 この事件に関して(関しても、というべきか)、テレビのコメンテーターが例によって「ゲーム脳」とか「現実と空想の区別が」とか言っているらしい。たしかに容疑少年が無差別殺人のゲーム(有害指定されるようなもの)をやっていたという事実はあるようだ。でもさ、それってあまりに短絡的というか、なんでもかんでもゲームと結び付けてコメントすればそれらしく聞こえるっていう、もう人としてやっちゃいけないくらい安直な「にぎやかし」じゃないの?正直、ゲーム脳よりもそういうコメントを恥ずかし気もなく出せるコメンテーターの脳の方がよほど逝っちゃってると思う。(でもってそういうコメンテーターを専門家とかいって重宝するマスコミもね)
 過去も現在も未来も、どうしようもないオヤジのせいで希望のカケラすら見出せないような暗い色に塗りつぶされた彼が、誰にも迷惑をかけずに衝動を発散する逃げ場としてゲームを選んだとして、それを責める権利は誰にもないでしょ。
 それに、だ。本当にゲームの世界と現実との区別がついていないのったら、彼は両親(だけ)ではなくそれこそ無差別殺人に走っていたのでは?殺したのが両親だけであるところが、彼が現実(それも親によって抑圧された非常に狭い世界)にがんじがらめにされていたことの証拠だと思う。
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by quix-que | 2005-06-23 15:34 | どっちかというと外の話


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