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私が平原綾香“Jupiter”を認められないわけ

 少女時代のある時期、クラシック音楽ばかりを聞いていた。家には河出書房かどこかから出ていたクラシック音楽全集があって、いわゆる名曲といわれているものはたいていあった。そんな中で、自分がはじめて買ったクラシックのレコードは、バレンボイム指揮のホルスト「惑星」だった。オケがどこだったか、フィラデルフィア管弦楽団だと記憶しているんだけど、現物はアナログプレーヤーが家になくなってからどこかへしまいこんでしまったし検索してもそれらしいのがないので、あやふやなんですが。

 でだ。平原綾香のジュピター。これを聞くと気分の悪さが胸の奥というか腹の奥というかとにかく奥のほうから沸き上がってきて、抹殺したくなるのだ。

 原曲を聞いたことのある人ならわかるとおり、「木星」という曲は、テンポの緩急とリズムの歯切れの良さが際立つ曲だ。そのメリハリの効いた緩急と歯切れが、太陽系最大の惑星である木星のスケール感とかダイナミックさを見事に表している。オーケストラアレンジも素晴らしい。古典的な管弦楽で宇宙空間的というか未来的/SF的なイメージをみごとに表現しきっている。作曲者であるホルストは『惑星』について、一切のアレンジや改変を認めないという遺言を残しているそうだけれど、それだけの価値のある、完成した曲なのだ。

 一方でまたこの曲は作曲者の遺志に反して、さまざまにアレンジされた形になっている。たとえば冨田勲のシンセサイザーバージョン。宇宙っぽさ/SFっぽさを表現するのにシンセサイザーっていうのは安直に過ぎると私は思い、まったく評価していない(実際聞きくらべれば、シンセバージョンが底の浅い作り物めいていることにすぐ気が付くと思う)のだけれど、それでもそれを契機にクラシックを聞きはじめたという人がかなりの数いることを考えると、それなりに意味はあったのかもしれないとは思う。

 駄菓子歌詞(←なぜか変換された)、平原バージョンはそれに比べてもさらに「何様?」感が強い。
 まずあの壮大ぶった観念的な言葉の羅列。ああいう言葉を選べば原曲と釣り合うスケール感が出せると思ったのかもしれないが、冗談じゃない。頭の悪い人が抽象的観念的な語彙を使えば頭よく見えるかも、とあさはかな考えで書いたようにしか思えない、底の浅い歌詞。
 つぎに、原曲の良さを徹底的に破壊した、のったらくったらした重ったるいテンポとリズム。バラード調にして重厚さを出そうと狙ったのかもしれないが、重厚っていうのはそういうものと違うんだよ。
 さらに、ちゃんと声が出ていない音域で無理に歌ってる歌。しかも歌詞をメロディにのせるのに、明らかにアトノリ気味というかズルズル引き摺るように乗せている。2番目ともあいまって余計に重ったるく聞き苦しくなっている。

 なんとこのヒト、音大生なんだよね。原曲に対する畏敬の念のかけらも感じられない、作曲者の遺志も尊重できない、曲の素晴らしさがどこであるかさえまるで理解できていないこのヒトに、音楽を学ぶ資格はあるんだろうか。なんかそんな風にまで思ってしまう。

 ちなみに。
 イングヴェイ・マルムスティーンは自分のアルバムの中で、イントロに「火星」のフレーズを使っている部分がある。傍若無人で自信過剰で知られるイングヴェイだけど、これについてはほぼオリジナルに近いものになってる。(まあ改変は改変だけどね)
by quix-que | 2004-12-02 19:47 | どっちかというと外の話


鶴は千年 亀は万年 シーラカンスは2億年 (c)phoque 1994-2017


by quix-que

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